全国援助職ネットワークとして活動する私たちの思い
ニーズの増大と多様化
いま、未曾有のコロナ禍によって人々とのかかわり・交わりのあり方が激変し、直接的なコミュニケーションの機会が抑制されています。いざという時に「会いたくても会えない」ことは、私たち一人ひとりの心に深い悲しみや痛みをもたらしています。また、支援や援助を必要としている方々の孤立化をはじめ、潜在的・顕在的に多くの課題や問題が生じていることを肌で感じています。
私たちを取り巻くフィールドでは「地域包括ケアシステム」の構築と発展を目指した様々な制度施策が施行されてきました。地域づくりのあり方が多様化し、変化のスピードは速く、変革の波が次々に起きています。地域社会のただなかに立つ私たちには、行政や保健・医療・福祉・介護・住宅・権利擁護その他の様々な専門機関やセクターと市民ひとり一人の暮らしを「繋げる」「かかわりを育む」役割期待が大きくなっています。
一方、人々の「人とのかかわり」に対する基本的な考え方や、仕事への取組み姿勢も多様化しています。雇用形態や立場役割の違い等から、組織の内外に潜むコミュニケーションの壁や対立壁も課題の一つです。
多忙を極め、追いつめられていくような圧迫感も・・・。
現代社会の中で、私たちは「成果の追求と達成」に追われ、目にみえる成果には繋がりにくい取り組みや活動に時間を割くことが抑制されがちです。
仕事で、ふと気づいたことや疑問に思ったことを、人々と心から自分の言葉で話し合ったり、お互いの認識の違いを理解し、認め合いながら共通点を探していくような時間と労力を要するコミュニケーションを後回しにしがちです。
相互理解が不十分な中で、相手に質問することをためらったり、質問されることに抵抗感を抱くこともあります。目の前の膨大な業務に、追いつめられるような圧迫感や孤立感を抱くこともあります。私たちは、それぞれ、問題意識を持ちながらも、『自分から発信したり、お互いに受けとめながら問題・課題の解決を共有するような「場」やコミュニケーションの機会づくりが難しい』と感じることが増えています。
私たちはどんな存在でありたいか。
どんな社会においても、人は生まれ落ち、人生をいき、この世を旅立ちます。社会の一員である私たちは、援助専門職である前に一人の人間です。働き方が多様化し、自分自身の老いや病をも抱え、その葛藤、苦しみ、痛みとともに生きています。同時に、援助職として、それぞれの領域でクライアントに心をひらき、相手の存在をまるごと感じ取っています。そこで感じ取る相手の人生の重み、さまざまな苦しみ悲しみの形に圧倒されながらも、援助のプロとして、常に客観的に援助過程をイメージし、援助を行動化しています。こうした止むことのない「かかわり」の推進力はどこから湧くのでしょうか…。
私たちは、変化が激しく厳しい時代のなかで、社会の一員である誰しもが「生きるちから」「希望」につながるようなかかわり、場づくりを実践し、人々とのコミュニケーションを通して個々それぞれの「生」を感じ取り、生きることへの思いをくみ取り、人と人とのつながりをつくり、共に歩き、ときに背中を押すような、自在な架け橋になれたらいいな。援助職それぞれの立場や役割は違っていても、それぞれの立ち位置から行動することで輪を広げたいと考えています。また、こうした思いを背景に、以下の取り組みを推進します。
- 援助領域の多様な立場・職種を超えて相互コミュニケーションをつなぐ「場」づくり
- 対人援助職のコミュニケーション技術基盤を再確認する支援
- ファシリテーション基本技術の習得支援
- コミュニケーション技術・ファシリテーション技術を職場や地域活動に活かす支援
- 援助過程やファシリテーション実践の継続的なふりかえりを支援
- 私たちの取り組みや実践経験を蓄え、知見を集約して発信
歴史・沿革
対人援助領域にファシリテーション技法を取り入れはじめた黎明期から
ファシリテーターが求められる現代へ。
この頃、ファシリテーターやファシリテーション技術という用語をよく見かけるようになりました。全国援助職ネットワーク(以下、全援ネットと略)では、1990年代の後半、介護保険制度の導入前から東京都社会福祉協議会の活動において、その概念と手法に着目し、市民参加型のコミュニケーション技法や地域ケア領域の研修、イベント、会議やミーティング、その他のコミュニケーション推進手段として活用してきました(表1)。
全援ネットの前身である東京都社会福祉協議会(センター部会)と知的発達障害部会(利用者支援研究会と研修委員会)」で主催した研修等(表2)の参加者は延べ4,000名以上。卒業生は、それぞれの問題意識にもとづいて、講座で学んだコミュニケーション推進の取り組み姿勢や知識・技術を職場や地域で活かす実践を始め、その取り組みは目覚ましい成果に繋がっています。
表1 全国援助職ネットワークの歴史・沿革
活動の黎明期~東社協高齢担当(センター部会)研修活動へ
1997~1998 | 東京都社会福祉協議会(以下、東社協と略)「東京都におけるケアマネジメントのシステムとその方法に関する調査研究」を実施。 |
1998~ | 上記報告書にもとづき、東社協総務部企画担当による市民団体や消費者団体、事業者と市民をつなぐ架け橋・新たな接点づくりを推進する取り組みにおいて初めてワークショップ手法を採用。現・株式会社地域・高齢社会開発研究所とのコラボレーションにより数々の市民講座・セミナーを実施。 |
1999~2000 | 東社協高齢担当(センター部会)研修委員会にて ワークショップ手法の採用を検討。2001年度より採用開始。 |
2001~2016 | 東社協センター部会主催の研修にワークショップ手法を採用。 職種別研修、チームケア推進、ファシリテーション等をテーマに多様な研修を企画・運営。 企画・運営協力 株式会社地域・高齢社会開発研究所 |
知的発達障害部会に発展
2008~2017 | 東社協児童障害担当(知的発達障害部会・利用者支援研究会)主催の研修にワークショップ手法を採用。 企画・運営協力 株式会社地域・高齢社会開発研究所 |
任意団体(全国援助職ネットワーク)設立
2017年3月31日 | 東社協高齢担当(センター部会)と知的発達障害部会のワークショップ研修活動を統合し、任意団体「全国援助職ネットワーク」として東京都社会福祉協議会より分離・独立。 |
2017~2018 | 東社協主催(全国援助職ネットワーク共催) ファシリテーターたまご実践情報交換会・相談会ワークショップ1日間講座 |
2017~2019 | 全国援助職ネットワーク主催(東社協共催) ・ファシリテーター育成講座即戦力向上【基礎編】ワークショップ4日間講座 ・対話型セミナー「ソーシャルワーカーに聴く自分史」 |
2020~ | コロナ禍により対面型のワークショップ研修を延期すると同時に法人化を目指す。 |
一般社団法人設立
2021年11月 | 「一般社団法人 全国援助職ネットワーク」設立 |
2022年11月~12月 | 確かなコミュニケーション技術に根ざした対人援助関係と場づくりを目指す コミュニケーション技術ふかぼり講座シリーズ1(7回講座)開講 |
援助の底ぢからを養う取り組みに、一緒に参加しませんか。
今、それぞれの活動領域で、皆さんはコミュニケーションや人とのかかわりにどんな課題や問題意識を抱いているでしょうか。そして、どんなコミュニケーションの『場』『機会』づくりを模索しているでしょうか。
私たちがお届けする援助領域のコミュニケーション・ファシリテーションに関する知識・情報、技術については、まだまだ取り組みの歴史が浅く、検証が必要です。今後、さらなる発展を目指し、実践を重ねながら継続的に学ぶことが大切です。
私たちが新たに身につけた知識や技術をより広く必要とする方々に届けるために、また、私たち自身が互いの学びを助け合うために、いま、できること・したいことに取り組んでみよう。誰かが対策してくれること期待するまえに、自分から手足を動かしてみよう。
『できるかな?大丈夫。やってみよう!』
表2 2001~2016年の東京都社会福祉協議会における主なワークショップ研修プログラム
高齢福祉分野 | 研修名(概要) |
---|---|
デイサービス | デイサービス職員ワークショップ2日間講座 |
在支・包括 | 在宅介護支援センター職員ワークショップ2日間講座 地域包括・在宅介護支援センター職員ワークショップ2日間講座 |
ケアマネジャー | 介護支援専門員ワークショップ2日間講座 |
サ責 | 訪問介護サービス提供責任者ワークショップ2日間講座 |
多職種多機関 チームケア・連携 | 多職種・多機関連携ワークショップ2日間講座 チームケア推進ワークショップ2日間講座 |
多職種・多機関 ファシリテーション | ファシリテーター【体験入門編】ワークショップ2日間講座 ファシリテーター養成ワークショップ3日間講座 ファシリテーター養成フォローアップ1日講座 ファシリテーター育成【導入編】ワークショップ4日間講座 ファシリテーターたまご相談会(個別相談会) ファシリテーターたまご実践情報交換相談会ワークショップ講座 ファシリテーター即戦力向上【基礎編】ワークショップ4日間講座 |
知的発達障害分野 | 研修名(概要) |
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【導入編】 支援員・相談員 多職種 | コミュニケーションスキルアップ基礎講座ワークショップ1日間 ~相手に寄り添う関係づくり・人が育つ職場づくり~ |
【中級編】 中堅 リーダー層 支援員 相談員 | ~職場内コミュニケーションの円滑化とミーティングの活性化を目指して~ 中堅職員コミュニケーション推進スキル体験ワークショップ3日間講座 ~人が育つ職場づくり・ミーティングや会議の活性化-コミュニケーションスキルを駆使した人づくり・職場づくりを目指して~ リーダー層実践力向上ワークショップ研修ステップアップ3日間講座 |
一般社団法人全国援助職ネットワーク設立発起人
- 社会福祉法人東京都手をつなぐ育成会
法人事務局 次長 有吉 孝之(代表理事) - 社会福祉法人白十字会 白十字八国相談センター
管理者 石川 祐子(理事) - 社会福祉法人池上長寿園
大田区立特別養護老人ホームたまがわ
生活相談員 井上 雅己 - 社会福祉法人睦月会 三鷹市北野ハピネスセンター
施設長 加地 大輔 - 武蔵野赤十字在宅介護・地域包括支援センター
センター長 庄司 幸江(理事) - 株式会社リビングプラットフォーム ライブラリ越ケ谷
施設長 水沢 吉伸 - 株式会社ウェルビーイング21 居宅介護支援事業所
管理者 山田 理恵子(監事) - 社会福祉法人東京蒼生会 日の出デイサービスセンター
山本 亜佐美(監事) - 一般社団法人認知症アセスメント普及・開発センター
代表理事・DASC-21事務局
株式会社地域・高齢社会開発研究所 代表取締役
吉野 望(理事) - 公益財団法人日本訪問看護財団 あすか山訪問看護ステーション
居宅介護支援事業所 管理者 鷲津 隆一(理事)